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九大における研究教育基盤の形成
農学研究院・准教授
九大に着任して4年が経ちました。Principle investigatorとしては初の職場であるため、スタートアップと地盤固めに奔走した4年間でした。初期の頃はやみくもに大型研究費に応募するなど焦りがありましたが、「焦らずに地道にステップアップすれば大丈夫」とメンターの先生や本事業関連の先生に励まされて以来、大型研究費への挑戦と不採択を繰り返す一方で、手の届く研究費の獲得により着実な実績を積み重ねてきました。日本社会では、大きな研究課題の資金を得る近道は小さな実績を積むことであると言われますが、実際に長期的視野のもとでコツコツと実績づくりができる環境は多くありません。本事業ではスタートアップの補助や長期的サポートがあり、地に足をつけた活動が可能でした。その甲斐があり、複数の民間助成金や科研費の継続的な獲得、国内・海外招待講演、また複数企業との産学連携研究の推進や特許申請など、堅固な地盤が構築されつつあります。
採用後は通常の講座に組み込まれ、全学教育科目や専攻教育科目、また大学院の授業科目を担当しています。授業の準備等で時間がかかりますが、入学したての初々しい大学1年生が徐々に成長し、立派に社会人となっていく過程に携わることはかけがえのない経験です。また、少数派の女性教員が低年次から大学院までの様々な授業に関わることで、学生にも広く女性教員の存在感をアピールできます。その学生達が社会に出た時、「大学では男性教員も女性教員も同じように教えてくれた」と認識していれば、自らの周囲にあるジェンダーに関する問題を公平に見ることに繋がり、社会にも良い影響を及ぼすことが期待されます。
研究室には教授や他のスタッフ(全て男性)が在籍していますが、各教員が独自の研究を行っています。筆者は卒論生や修論生を毎学年2人程度受け持ち、研究グループを形成しています。講座制の中に組み込まれることには独立性の問題が付随しますが、PIになりたての研究者が全実験設備を一人で揃えるのは容易ではありません。筆者は研究室内でも独立性が確保される環境で、着任当初から既存の講座内設備を共有でき、なおかつ専用で使用できる実験スペースを提供頂いたため、スムーズなスタートアップが可能でした。また、研究室に所属する学生にとっては、同研究室内に男性教員と女性教員の両方が存在することが安心の種になるようです。バランスのよい指導管理体制を保つ上で、自らの存在意義が大きいと感じております。
独立研究グループを形成してから4年がたち、様々な試行錯誤を経てようやく独自のカラーが付いてきたように思います。学会で指導学生が優秀賞を受賞するなど、学生も育ちつつあります。さらに研究の質とアウトプットを高め、「九大にこのグループあり」とまで認知度を高め世界に貢献できるよう、精進していきたいと思います。