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「大学教員を目指す女性研究者の皆さんへ」
農学系 准教授
近年、博士課程後のキャリアパスプランが議論されるようになってきましたが、研究を続けるという点にこだわると、やはり企業や国公立独法の研究所もしくは大学の教員になるのが一般的です。これらのポストを得るためのチャンスは多くありませんし、30歳を超えてまで先の見えない不安定な状況が続くということは、経験した者にしか分からない独特の厳しさがあります。年代にもよると思いますが、残念ながらそういう現実が今、紛れもなくあることは、研究者を目指す学生諸君は認識しておく必要があるでしょう。一方で、指導教員や大学としては、研究者以外の多彩なキャリアパスを本気で発掘し開拓をしていき、学生達に提示していく必要があると感じます。国全体が博士のキャリアを必要とする環境になれば理想的です。博士号を取ることがその先の自分の人生の幅を広げるのだと認識される時代が来るように、国をあげて取り組んで行かなければなりません。
私が九州大学に着任して2年が経ちました。現在私が所属する研究院(研究科)は、これまでの自身の専門とは多少異なる分野であるため、学生への教育指導方針や研究に対するスタンスとの違いに戸惑いを覚えているのも事実です。その中で、自分が理想とする教育と研究をどう形成していくか、まだまだ模索中です。
現在、私が主宰している研究室には4年生・修士課程生・留学生が所属していますが、彼らには『自分が興味を持った事を研究テーマに』『自分で選んだ以上、自主性を持って熱心に向き合い、学術的に認められる成果をあげるように』と指導しています。昨年度末に初めての卒論生を受け持ちましたが、彼らから、研究について「充実していた、達成感があった」と言ってもらえたことが何よりも嬉しい出来事でした。
私が当初から大学を目指していたのは、研究所とは異なり、大学が研究と教育の両輪で成り立っている場所だと認識しているからです。私自身が学生時代に経験したように、学生達には研究することの楽しさや充実感を味わってほしいと考えています。その中で、もっと大学に残って研究を進めてみたいと考える学生が増え、進学率が向上していくのが理想的だと思います。
女性研究者をサポートする環境は非常に整ってきました。その中でも九州大学の整備体制は大変優れており、他の組織と比較しても国内トップクラスだと思います。私自身、着任してから今までの間、女性だからという理由で不利益を感じたことは皆無ですし、むしろ恵まれていると感じることの方が多いくらいです。だからこそ、性差を理由にした言い訳は許されないなとも思います。
そのような中、個々人としても社会としても、これから必要になってくるのは柔軟性なのではないかと思っています。しなやかさを身につけることが自分自身を助けるとともに、明るい未来を手繰り寄せるのではないでしょうか。レジリエンスを高めておいて、来るべき困難にも柔軟に対応できるよう、日々を過ごしていくことが重要だと感じています。